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DTMは「増やす」より「選ぶ」が大切

DTMは「増やす」より「選ぶ」が大切

音楽制作にはコツがあります。
要点をおさえていれば、探求を続けるだけ作品はよくなりますが、方法を間違えるといっこうにうまくなりません。
大事なのは「考え方」

今回紹介するのは「増やさずに選ぶ」という考え方について。
陥りやすい落とし穴にみなさんがはまらないように、丁寧に解説します。

選択肢が無限なDTMの落とし穴

DAWは非常にマルチなツールです。
作曲、アレンジ、エンジニアリングの作業がひとつのツールに統合され、拡張プラグインや音源を利用すれば、音楽に関してできないことはまずないですし、逆にDAWを使わない音楽制作など現代にはありません。

人は選択肢や可能性が増えると、その分だけ状況が良くなったと錯覚しがちです。
では、時間をかけたぶんだけ良い作品ができるかというと、必ずしもそうではありませんよね。
選択肢が多すぎてわけがわからなくなってしまったり、不要にたくさん音を入れてしまった経験、ありませんか?

DAWは「ツール」で制作は「デザイン」
選択肢が無数にある現代だからこそ「選ぶスキル」が重要です。

質をあげ、選択肢を減らす

まず、音源やプラグインが増えすぎている場合は、不要なものを消すか、非表示にしましょう。
本当に良いツールはシーンを問わず高いパフォーマンスを発揮します。
ツールって実はそこまで数が必要ないな、というのが15年以上この世界で生きて来た僕の結論です。

新しいツールがきたときは、「増やす」ではなく「更新する」のイメージです。
レギュラーで採用するツールは、一定数以上増えるべきではありません。

ただ、バリエーションが必要になるジャンルはあります。
例えば、ピアノ、ドラム、ストリングス、ブラスといった楽器は、ジャンルによって必要なサウンドが異なり、相性が悪い音源を使うとミキシングや打ち込みで挽回できないことがあります。
このケースでは音源のセレクトが最も重要になるので「〇〇系のピアノ音源」といった要領でジャンルやサウンド別に区分けする必要があります。

「少ない方が良い」ということではなく「不要な選択肢を残さない」というニュアンスでご理解いただくのが望ましいです。

空間が多いほど、音質は良くなる

音は同時に鳴っている数が多いほど、それぞれの音が干渉しあって音に悪影響を与えます。
いわゆるマスキングという現象で、マスキングが過度に生じてしまうとダイナミクスは失われ、それぞれの音の響きは埋もれてしまいます。

ミックスダウンでは、それらの音の不要な干渉を防ぐために、EQやコンプなどを使って音の分離を確保します。
ですが、ミックスのアプローチばかりに頼っていては、出来上がるのは音が激しく変形された、お弁当箱に無理やり詰め込まれたおかずのようないびつな音ばかりです。

たくさんのアイデアやサウンドを一つの楽曲に採用したいとき、同時に鳴る音数に制限を設けましょう。
減らすのではなくシーンによって「選ぶ」のです。

人は、一番大きく鳴っているサウンドをそのシーンの印象として記憶します。
たとえ70トラックあるプロジェクトでも、同時に鳴るレイヤー数を20トラック以内に制限しておけば、それらの音の臨場感は失われることはないでしょう。

ミキシングの技術ばかりに頼るのではなく、起こりうる問題にあらかじめ対処できるように、アレンジをデザインすることが重要です。

聴く音楽を探求し厳選する

日本には「海外の音楽を聴く事に消極的」なリスナー層が多く存在します。
ストリーミングサービスやYoutubeではどんな音楽にアクセスすることも簡単なのに、非常に狭い範囲のシーンに影響を受けている人は、ミュージシャンでさえでも増えています。
※アニメやゲーム、アイドルしか聴かない、といった層もその一例です。

プロとして音楽に携わる、もしくはそれを目指す人間は、そのままではいけないと思います。
日本の音楽シーンは、世界的に探求性が高いとはいえません。
(個ではなく、あくまでシーンとしてです。)
日本の音楽シーンで、ここ5年でサブカルチャー的なシーンが話題になったことがありますか?

海外には、さまざまな音楽の高みを目指すアーティストの創作が日々更新されています。
クリエイターやパフォーマーとして人々に創造性を提供するために、これらの貴重な財産を吸収しない手はありません。

「良質な音楽を知るための情報源」を知るために、SNSやネットの情報源に目を光らせていることは重要です。
チャートや世間の評価は気にせずに、自分の琴線に触れるアーティストや音楽に多く触れてください。

優秀な作家やアレンジャー、エンジニアは必ず優秀なリファレンスライブラリーをもっています。
クリエイションやアプローチに悩んだ時、これらの音楽はかならずあなたに大きなヒントを与えてくれます。

まとめ

考え方やアプローチの仕方を変えれば、どんな物事も結果は必ず変わります。
自分の体や頭の癖に従うのではなく、「今の自分に何が必要なのか」を客観的に考え、最善の手を尽くしてください。
音楽シーンは産業的にも内容的にも苦しい局面ですが、私たちの生活を豊かにする音楽が、この日本にもあふれてくれることを願っています。

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