プラグイン

「Waves」はDTM界の「ユニクロ」である

「Waves」はDTM界の「ユニクロ」である

DTMで初めて有償のプラグインを導入しようとするとき、まず目にはいってくるのが「Waves」
広告の多さや知名度が圧倒的に高く、レッスンでも「Wavesのバンドル製品を購入した」という方は珍しくありません。
価格的にも、全盛期と比べ上位グレードのバンドルが安価で手に入るようになりました。

Wavesのプラグインは今の時代においてトップクラスとは言えませんが、メーカーの特性を理解しさえすれば、他のメーカーのソフトと合わせて高いパフォーマンスを得ることができます。
2018年9月現在の、Wavesの価値について、私の見解を紹介します。

Wavesのすごさ

僕がDTMをはじめたのは23歳ごろ、その頃は猫も杓子もwavesとprotools、といった時代。
Wavesは高級品で、やっとの思いでルネッサンスバンドルを買った記憶があります。

私の仕事に使っていた初代のPCはCore2DuoのMacbookでしたが、Waves製品は低スペックでも安定して動きます。

DTMの土台が不安定な時代から、音質や創造性に対して積極的にアプローチした開発。
音楽にとどまらない、音声処理全般への幅広いアプローチ。
シグネイチャーシリーズ。ハードエミュレーションの礎を作ったこと。

一番大きいのが「低負荷」を徹底した開発を行えたこと。
ちょうどDTM人口が増えだした頃で、PCのスペックの弱いDTMユーザーには、プラグインの負荷が軽い、というの必須条件でした。

※今でこそ知るひとぞ知る「Acustica Audio」でさえ、当時のソフトは高負荷かつ不安定で、使えたものではありませんでした。

多くの功績から、wavesはプラグインベンダーとして一流の評価と認知度を得るに至りました。

Wavesの「今」

Wavesが作り上げた「プラグイン界の作法」は、新しいベンダーに真似され、改良され、品質としては大きく追い越されてしまっている側面があります。
wavesは今、アビーロードやシグネイチャーモデルといった「ブランド力のあるタイトル」に重きをおいたリリース作品が多く、消極的な印象です。

Wavesは「負荷の軽いプラグイン」を作るのがうまいですが、緻密な音声処理が苦手です。
同社の製品を使っていた経験がある方はわかると思いますが、どの製品も「ツボはおさえているが、これじゃない感」が拭えないのです。

一般のDTMerがcore i7のパソコンを持つのが珍しくない時代となり、wavesは「低負荷」が武器ではなくなり「ざっくりと特徴をおさえただけのサウンド」が通用しなくなったのです。
記事のタイトル通り、安くてそこそこ良いものを販売するチェーン店。
wavesはブランド品から「DTM界のユニクロ」となってしまったのです。

Wavesの音への私見

基本的な音声処理に関連する、EQ・コンプ・サチュレーション・リバーブ系は不要です。
悪くないものもあるのですが、良いものがありません。
エミュレーションの種類は多いですが、半端なクオリティーのエミュは制作において逆に邪魔になります。

Wavesのプラグインを3000円で10個買うなら、3万円のAcustica Audioやハードを一つ持ちましょう。

ノイズ処理もizotope一強です。私はAdobe Auditionを使っていますが。
ソフトシンセもwaves製を愛用しているという話は聞いたことがありません。
全体的に、安くて中途半端なクオリティーのものが多いです。

時代が変わっても便利なwavesプラグイン5選

では、wavesに価値がなくなってしまったのか、と言われればそんなことはありません。
「ユニクロ」はブランド品を売りませんが、安価で素敵な商品がたくさんありますよね?
質が落ちたと考えるより「質のあり方が変わった」と考えるべきです。

エフェクティブなもの、動作原理がユニークなものは使えます。
単品でも安いので、必要なものを抜粋して購入すると、費用対効果の高いベンダーです。

wavesは緻密な処理がにがてですが、ユニークなアプローチを多く持っています。
多様な開発委託先を持ち、エンジニアのユニークなアイデアが反映された製品は、ワンポイントな使い方では絶大な効果を発揮します。

wavesの中で私がおすすめするプラグインを5つ紹介します。

Vocal Rider・Bass Rider

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ボーカルとベースの音量補正を行うプラグインです。
ボリュームフェーダーをオートメーションでコントロールする形で行うので、通したことによる音質の劣化はありません。

3000円くらいで手に入って、ソースのボリューム調整を半自動化できます。
このソフトの使い方のコツは「ボリュームの可動範囲を小さく、ピークをおさえるようにフェーディングさせる」

可動域が多いと微妙な書き方をするので、あくまで不要なピークをおさえこむようにセッティングするのがコツです。
私は歌の収録やベースのライン録音を行うので、ソースのトリミングに絶大な威力を発揮しています。

Scheps 73

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EQポイントが面白く、効きがわかりやすい。プリアンプも無難で使いやすい。
秀逸なのはローカットで、通常のEQでは音痩せしてしまうところを、不思議といい感じにまとめる素敵なローカット。

私は低音処理は音への影響を考えてポイント処理することがほとんどなのですが、低域でソースがぶつかり、優先度の低いソースを音痩せさせるとき、このローカットを使います。

使用頻度は少なくなってしまいましたが、Wavesのエミュレーションの中では全体的に好きな動きです。

Aphex Vintage Aural Exciter

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エキサイター自体はアプローチが強引であまり好きではないのですが、初めてエキサイターで好印象をもったソフトです。
かけすぎると破綻しますが、音色を調整して0.2〜0.5くらいで混ぜてあげると良い感じです。
音が多い中でどうしても抜けにくいソースや、音抜けの悪い声に使います。

Super Tap

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多機能ディレイエフェクト。最大5つディレイを発音でき、「Analog Delay」というプリセットをよく使います。
エフェクティブな残響性が欲しいシーンでは、リバーブよりディレイで表現したほうが良いケースがあります。

このディレイは音が丸く、メインソースを邪魔せずに良い感じのエコーになるので好きです。
バスで鳴らして後ろにトランスやプリアンプを挟んでやるとなお良いです。

C6、F6

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C6は6ポイントのマルチバンドコンプ、F6は6ポイントのダイナミックEQです。
前述の通り、音声処理にwavesを選ぶべきではないと考えているのですが、マルチバンドやダイナミックEQは初心者には難易度が高いので、練習用にはもってこいです。

現代では、マルチバンドもダイナミックEQもミキシングにおいてなくてはならない働きをします。
音質もそこそこで、周波数帯ごとのソロ再生もできて機能的には申し分ないので、使いこなせば十分に戦力になります。

まとめ

どんなメーカーでも、かならず製品の出来不出来はあるので、ブランドを妄信的に信じるのは危険です。
新しいソフトを導入するときは、かならずデモ動画をみたり、トライアルで動作チェックをして、自分の耳で判断することを心がけましょう。

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